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2010年7月14日 (水)

子どもたちに優しい木造の教育施設

南小学校屋内運動場
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 鹿児島市のほぼ中心にある鹿児島市立南小学校に、子どもたちが待ち望んでいた屋内運動場が完成しました。
 架構の特徴は、大断面集成材の直材を組み合わせたことにより、高い強度が得られる安定した構造を実現。木の醸し出す柔らかい空気に包まれたこの体育館は、子どもたちはもちろん、地域のスポーツの場としても有効利用が期待されています。
 約二十年に渡り、鹿児島市に於かれては市内全ての屋内運動場を木造で建設してこられました。学校毎の単発でなく、早い時期から全てを木造にというのは全国でもまれなことです。二十二年度の国の施策である「低層建築は全て木造化」を二十年以上先駆けて実行しておられた先進性は、素晴らしいことです。

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DATA
所在地:鹿児島市
発注者:鹿児島市様
設 計:(株)吉建築事務所様
施 工:(株)岩田組様
床面積:1231m2
木材使用量:143m3

子どもたちに優しい木造の教育施設

木造の教育施設は、子どもたちの感性や豊かなに人間性の涵養に少なからぬプラス要因となることが学会(木材学会等)で提言されています。

世知原小学校校舎
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 佐世保市の穏やかな山間部にある世知原小。この春完成した校舎は、地域ぐるみの学力向上を目指して早くも地域のシンボル的存在になっています。
 建設にあたっては、「木」本来の良さを取り入れた教育環境の向上を図っています。木造の教育施設は、子どもたちが感性を培い、心身共に健康で豊かな人間性を養うことが出来、建物自体が環境教育の教材にもなります。
 校舎は、大断面集成材を表しとすることで、伸びやかな空間構成を実現。内部はバリアフリー対策としてエレベーターやスロープなどを設置しました。又、広い屋外テラスや多目的スペースの設置、充分に配慮した採光計画で大変明るく健康的なスペースが確保できました。

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DATA
所在地:長崎県佐世保市
発注者:佐世保市様
設 計:(有)佐々木設計様
施 工:みなと・森・細川JV様
床面積:3423.21m2
工 法:サミットHR工法
    (三井住商建材(株))

建物探訪

~中津新貝市長様より原稿を頂戴しました~

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中津市長 新貝正勝様

 中津市は、平成17 年3月に3町1村と合併し、実に市域の77.5%が林野となりました。これを契機に、山国川流域材を学校などの建築に活かすため、学識経験者や市内事業者などから成る「中津市木造校舎等研究会」を立ち上げ、平成17 年度から約1年間にわたる研究を重ねてまいりました。その成果として、木材活用の課題やポイントを整理することができ、地域産材を用い地元の工務店で建てる「地材地建」を実現することへの目途が立ちました。
 そして、建築に当たっては、東京の増田建築構造事務所や鹿児島の山佐木材、日田市の製材業者などの協力を得ながら、地元の設計事務所建設会社、製材業者、木材協同組合、森林組合などが市とともに総力を挙げて取り組んだ結果、全国的にも注目を浴びる体育館を建築することができました。
 中津市では、学校や公民館などの公共施設の建築に当たり、今後も積極的に地材地建に努めてまいる所存です。

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▲存在感を放つ木材の架構

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▲体育館外観

ムク材を用いた大架構

最先端加工技術による木造在来大架構建築物の試み

施工者の㈱ミツワ取締役総括設計部長鴨川雅彦様に原稿を頂戴しました。

 新世紀を迎えて10 年が過ぎましたが、21 世紀末以上に進むグローバル化の中、あらゆる分野で多種多様な変化が見られます。建築においても、目覚ましい技術革新と共に複雑多様な思考経路が追求されています。今回の鶴居小学校体育館建設においても、市長が「この事業は壮大なる実験である」といみじくもおっしゃったように、古来より我が国の木造建築の中で培われてきた伝統継手を、最先端の加工技術により、現代建築にどう再生し得るかの挑戦でした。
 体育館のアリーナ部分は、アーチ梁を使った全長20.7m の大架構10スパンで構成されています。複雑多種な継手は、ドイツ製のK2という3D加工が可能な高精度の製材機械と、高度熟練な匠の手仕事により、時代を代表する建築物を世に登場させることが出来たのです。まさに、伝統技術の保存と再生の課題に一石を投じた思いでありました。

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▲鶴居小体育館内観:延床面積841m2(うちアリーナ部分578m2)

地元の建物は地元の木で作る

 『地元にできる大切な建物を、先人たちが育ててきた近くの山の木で作りたい』
 これは大変大事な人の心です。愛着のある山の木を使って造ることで、建物への愛着も高まり、それが建物の寿命を延ばす役割も果たします。地元の木を使うことのメリットは沢山あって、地元の林業の活性化から間伐も進み、森林やひいては地域の環境も良くなります。

木材加工の広域連携で木材活用を広げる

 地元で生産される丸太は、小径材、曲がり材、直材等々様々な形質のものがあります。成熟した直材なら建築用材等にすぐ活用され、重宝されます。いま活用の道が少ない小径材や曲がり材は山にそのまま放置されていのが現状です。このような材料を利用し、集成材・多積層パネル・フローリングなどに加工することが出来ます。
 大型木造施設など空間の広い建物は、地元で加工される材料『製材無垢製品』+広域加工の材料『大断面集成材、合板など』が必要です。(有馬)

当社では、山にある木材の評価や、材質のチェック、地元林業・加工産業との連携により、地元の木を使った優れた建物づくりをコーディネート致します。

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鹿児島の季節 冬から春へ

今年の大雪
 南国鹿児島とは言え冬の寒さは厳しく、雪も降ります。1月13 日は朝から大雪で、平地で
も3cmくらい積もりました。この日上京予定で、バス会社に確かめ、一便早く出ましたが正解でした。あと3月10 日と、今冬は2回の積雪がありました。

薪ストーブ
 会社では薪ストーブが部屋中を暖めてくれます。薪は乾いていれば何でも良いものの、カシ等を一本入れておくと火持ちが違います。雑木と言われる広葉樹も薪にすると真価を発揮します。
「千石船の舵は大隅の白樫」と言われたほど大隅半島の広葉樹は有名でした。当社の前身は「九州樫材工業(株)高山工場」で、銃床、工具の柄、荷車の車軸等の原材料として製品を貨車で送っていたそうです。風害が強く火山灰土壌の当地では、かつてのように広葉樹林業も研究する必要がありそうです。

菜の花
 3月は菜の花の盛りです。子供の頃町の油屋さんで菜種を煎る香ばしいにおいは、黄金色に揚がった芋の天ぷらのおいしさと共に忘れられません。

つわぶき
 春になると新芽が勢いよく伸び、何回も食膳に上ります。実においしい春の恵みです。鮮やかな黄色い花の種が散って翌年親株の横に新芽が生えます。

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H22.2.19 肝付町内

鹿児島のおいしいもの 酒鮨

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 鹿児島の特別のご馳走として酒鮨があります。目にも鮮やかな豪華な季節の料理です。この鮨は何と米酢の替わりに酒を使います。
 鹿児島は焼酎王国であり、全国唯一日本酒メーカーのない国ですが、二、三の醸造所で米のお酒が作られています。「地酒」と呼ばれる甘い酒(灰持酒)で、この酒鮨や料理、お屠蘇に使います。
 町内の旧家に明治の頃誂えた立派なすし桶があり、私の家では春に一度この桶をお借りして、酒鮨を作ります。筍、きのこ、つわぶきなど前日から準備します。私も邪魔にされながら鯛を捌き、海老を煎り卵焼を焼きます。
 鮨のお酒で顔が赤くなるからと集まるのは休日の昼。「地酒」は既にたっぷり使われていますが、銘々取り皿に取った後好みで更にかけます。鮨の口触りが一段と丸くうまくなります。「寝た子を起こされて」、後は心ならずも焼酎と言うことになります。(佐々木)
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