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2010年11月

2010年11月20日 (土)

木橋のメンテナンス 木製車道橋の維持管理

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雄大な自然に囲まれた奥ものべ紅香橋

(株)長大 構造事業本部/西日本構造事業部
西本 公治様より原稿を頂戴しました。

 奥ものべ紅香橋は、高知県と徳島県の県境にほど近い香美市物部町の別府に、高知県内初の木製車道橋として平成12 年11 月に建設されました。
 橋が架けられている場所は、標高900 mを超える物部川の源流近くの別府峡に位置し、四季を通じて変化に富んだ風景が楽しめ、特に紅葉の名所としても知られています。
 建設当時は、紅葉をイメージし赤く朱塗られていた橋桁も、10 年近く時を経て塗装も色褪せ、次第に傷みが目立ち始めました。特に、張出部分に設置されていたFRP 製の防水シートは、強風にあおられたことにより至る所が破れ、その隙間から水が浸透していました。
 一般的に、鋼製やコンクリート製の橋に比べると、天然素材で作られた木製の橋は経年劣化しやすいと言われており、日頃のこまめな手入れが重要であります。
 そこで、水の浸透による影響がないかどうかを調べるために、平成20 年に点検を行いました。

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雨天の中での点検状況

 点検は雨が降りしきる中行われました。降雨中の作業は、橋の劣化に大きく影響を与える”水” の流れを確認できる、またとない機会となります。この点検の際にも、晴天時には確認できなかった、水の流れを確認することができ、非常に有益なものとなりました。全般的には、防水シートの傷みや塗装の経年劣化等はあるものの、建設後10 年を経た木製橋梁としては比較的程度がよいという印象を持ちました。これは、標高900m を超える高地で湿度が低く、風通しの良い谷部に橋が架かっていることが大きく影響したのではないかと考えられます。
 この点検結果を踏まえて、山佐木材(株) 様のご協力も仰ぎながら、傷み具合に応じ今後のメンテナンスも容易となる方法を検討し、FRP 製防水シートに代わり定期的な防腐剤の塗布を提案いたしました。防腐剤の塗布であれば、特殊な施工技術を必要としませんし安価ですので、管理者の方でも容易にメンテナンスを実施することが可能になります。
 人々の憩いの場である公園、その他の施設では、自然のぬくもりと優しさを演出できることから、橋梁やその他の施設の主要構造に木材が多く取り入れられています。またそれは、木材資源を計画的且つ有効に利用することにより構築される循環型社会の形成に向けて、非常に重要な役割を担っていると言えます。しかしながら、天然素材である木材は経年劣化しやすく、比較的短期間で使用不能に陥った例も少なくないことから、今後、より一層メンテナンスに対する取組に力を入れることにより、木製施設の長寿命化を実現することが木材普及にとっても重要であると考えております。今回の、点検から補修検討、補修工事に至る一連の取組が、今後の木製施設のメンテナンスを実施していく上で、一つの参考資料となれば幸いです。

日向市駅前交流広場休憩施設

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2010年7月、日向市駅前広場に耳川産スギ材で作った集成材を使用した新しい施設が加わった。日向市駅プロジェクトは、2006年12月の日向市駅の開業を皮切りに東・西口駅前広場、東・西キャノピー、高架下施設、交流広場と整備され、今回の交流広場休憩施設は1999年から始まった日向市駅プロジェクトの最後を飾る施設となる。日向市は耳川河口に位置しており、地場産の杉をまちづくりの随所に用いる地域の風土あふれる都市景観の育成に努めている。日向市駅周辺は杉まちづくりの象徴的な空間となっている。
 これまでに完成した駅舎では変断面集成材を、キャノピーでは新構成集成材と、構造パートナーである川口衞構造設計事務所と杉集成材の新たな可能性を探ってきた。今回も同様に川口事務所とともに日向市駅プロジェクト集大成にふさわしい杉集成材を使用した木構造の計画を行った。
 計画の休憩施設は柱を鉄骨とし、梁を全て杉集成材で構成することを考えた。休憩施設の用途はイベント時の舞台としての機能も課せられるため、最大で9m×6m のスパンを確保する必要があった。梁に小断面集成材を組合せ束ねることで、構造的には大断面集成材相当の梁材として機能させることを考えた。具体的には3寸角の集成材を井桁状に組みあわせ構成される工法で、柱から軒先にいくに従って組合せ段数が少なくなり、徐々に迫り出していく構造となっている。
 設計時点で問題になっていたのは、集成材の精度である。柱廻りで最大13段の集成材をX・Y両方向に組み、なお上下に組合せる集成材には双方に欠込みをして、応力を伝える工法になっているため、現場での精度監理は、非常に難解であることは想像できた。この問題を解決してくれたのが、辰工務店の黒岩所長と山佐木材である。構造の生命線である施工精度を確保するため非常に精巧なモックアップを製作し、施工手順・精度監理を入念にチェックしてくれた。これにより現場での建て方は非常にスムーズに進み、非常に精度の高い杉集成材の架構が建ちあがった。
 出来上がった建築をみると不思議な感覚になる。全体の印象は使用された杉量のわりに架構自体は非常に軽く、軽快な印象を受ける。と同時に細部は、緻密で施工した職人たちの力量が伝わってくる力強い建築である。
 日向にふさわしい杉の施設が、また1つ加わった。

内藤廣建築設計事務所 山田徹様より原稿を頂戴しました。

今年築二百年を迎えた 二階堂家住宅

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 戦国末期以来、郷士( ごうし)(在村の武士)として代々高山に住まいした二階堂氏。その屋敷として建てられた二階堂家住宅は、今年で築200 年目を迎えます。
2 棟が接続する「分棟型( ぶんとうがた)」という形式で、正面向かって右棟を「おもて」(1810 年築)、左棟を「なかえ」(1889年築)と呼び、前者は接客空間、後者は生活空間として主に使われます。部材は杉・松・タブなどに加え、竹を床や庇( ひさし) に使用します。
 両屋根が接するV 字の窪みには雨が溜まりやすく、屋内への漏水防止のため、窪みの底へは竹を組んだ雨( あま) 樋( どい) を渡し、雨水を排出します。雨樋の下は「てのま(といのま)」という小さな板の間ですが、これは特に伝統的な形式とされます。古い時代の分棟型は両棟間の距離がより遠く、板を渡して行き来していましたが、その距離が縮むにつれ外廊下は次第に内部化し、部屋と同様に畳敷となる型が主流となります。廊下の名残りを板敷の「てのま」として残す民家は、現在は当住宅の他に日本で1 例のみという大変珍しいものです。
 当住宅は、薩摩藩内の分棟型民家の古い構造形式を良く残し、部材仕上げも丁寧で改変も少ないとして、1975年に国の重要文化財に指定されました。(二階堂 行宣様に御寄稿頂きました)

木造施設をながーく使おう!

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 高山温泉ドームでは、ドーム内部木材にカビがみられ、金物接合部、結露しやすい部位に今後腐朽の恐れがでてきました。肝付町では築後六
年たった平成十七年にメンテナンス工事を発注され、当社で受注致しました。
 処理内容としては、木構造部材を全面的に塗装を剥がし、ホウ酸塩濃厚液の塗布及び再塗装、接合部付近に穿孔してホウ酸塩ペーストの注入
をしました。更に、同一処理をしたサンプルを浴場内に設置。経時変化を追い、効果を確認します。
 高温多湿の浴場、屋外の木橋など厳しい条件にさらされる木造施設ではメンテナンスが不可欠です。
木橋はもちろん建物でも、最近では佐賀県のノリ乾燥施設、沖縄県内各施設では、全ての木材を処理して建設されています。
※ ホウ酸塩処理には、保険適用、保証制度もあります。ぜひお問い合わせ下さい。

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鹿児島のおいしいもの 旬の味

○うめ
 自宅庭の二本の梅の木から多い時は50kgも実が取れて梅酒、梅干しは自給できます。今年は花の頃寒がきつくて蜂が来ず(替わりにメジロが毎日)、結局5kgも取れたでしょうか。

○たけのこ
 孟宗竹のたけのこが普通ですが、コサンダケ、ニガタケ、カラダケ、ダイミョウダケと次々においしい筍が食べられます。中でもダイミョウダケがおいしさでは筆頭と言われています。

○かつお
 鹿児島はかつおの大産地です。黒潮に乗って鹿児島の沖から北上を始める頃はまだ脂が乗っておらず、鰹節に向きます。
 港町生れ(鹿屋市古江)の父はこの時期新しい鰹が届くと、醤油のたれに刺身の残りをつけ込んで、茶漬けにしてくれました。その時鶏卵を何個か割り込んだものです。脂肪の少ない鰹にこく味がついて、子供心に刺身よりうまいと思ったものです。

 鰹節の副産物に、安くてうまい隠れた名品があります。

① 腹皮‥‥脂肪の多い腹の身は鰹節にならないので切り取って、この三角形の身を塩漬けにして干します。以前山川港近くの魚屋さんで、新聞紙に包んでもらって驚くほど安くで買いました。焼いて酢につけて食べると、素朴な滋味が口中にあふれます。飯のおかず、焼酎の肴として良く合います。

② 塩辛(酒盗)  三つの中では最もポピュラーで、観光客用にはきれいな小瓶で値も高いですが、産地では地元用に一升瓶に入った徳用品もあります。

③ せんじ(煎じ)  鰹節をつくる時のかつおの煮汁には絶対にうまみが出るはずで、これを煮詰め=煎じたものです。みそ汁、煮物に少し入れれば、鄙びた濃いうまみが加わります。

○じゃがいも
 さる国の言葉で「地のリンゴ」というそうですが、新ジャガイモは皮を剥くとリンゴと見分けが付きません。揚げ物に煮物にサラダにと多彩な料理が出来ます。ニュージーランドのフィッシュアンドチップス、シアトルの朝食に細切りを油で焼いたものも、その時の情景を含めて印象深く思い出します。

○あじ(鰺)
 春から夏にかけて釣りをすると、最初豆アジ、次は小アジと段々大きくなる季節の魚です。10cmを下回るくらいの小振りのものを背骨ごと切って(背越し)どんぶりに入れ、酢をたっぷりかけ醤油で食べると実にうまいものです。歯が弱った今はもうムリですが。
 20 年以上前の梅雨の頃、こんなに釣れて良い物かと思うくらい釣れました。半時間で打ち切りにせざるを得ない程の豪雨の中、数人で多分300 匹、帰って早速手分けして刺身に、煮て焼いて揚げて、出来る端から食べて、焼酎をあおる。アジを見ると無茶が出来た頃を懐かしく思い出します。  (佐々木)