第7号 Feed

2012年2月22日 (水)

やんばるの森

Wd7_i_001 平成23 年4月に、「Yanbaru Discovery Forest やんばる学びの森」として、宿泊施設・ビジターセンター・食事施設が整備され、リニューアルオープンいたします。今回、この施設の設計を担当されました一級建築士事務所アトリエ アクシス(Axis) 仲地 昭様より原稿を頂戴しましたので、ご紹介いたします。

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やんばるの森

 ここは、やんばると呼ばれる沖縄本島の北端で山の中、沖縄戦の戦火からのがれた唯一、自然と文化が残った場所。世界的にも貴重な亜熱帯の森を有する魅力的な場所です。そのやんばるで沖縄の水瓶と呼ばれる安波ダム周辺は希少な動植物が住み、群生し、別名クイナ湖(ヤンバルクイナ)とも呼ばれています。その安波ダムで計画されたやんばる学びの森事業は、やんばるの自然・文化を継承し活用する体験・滞在・保養・交流の場として、持続可能で環境にやさしいを柱とする、国頭村の地域振興事業の計画の中で重要な事業です。

 施設の計画地は、無用な自然破壊の開発を避け、既に人の手が加わったダム建設で使われた、飯場及び残土捨場です。

 建物は全体の核となり多様な対応をする管理棟のビジターセンターと外来者や宿泊者を受入れる食堂棟、宿泊棟の3 棟から構成。廻りには、自然と触れ合える散策路が整備され、魅力あふれる内容で訪れる方々を4月から迎え入れます。

 その重要な施設を計画するに当たり、自然と対峙する建築のあり方、表現方法はと悩みながら、現実から離れる事で、自然に対する感動と文明のあり難さや恵まれる事の問題をどう感じてもらえるか、それをどう形にするか、運営側といろいろ話し合いながら進める事なりました。

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構 造

3つの棟は木造に見えますが、用途による構造制限、予算、別々の補助事業とそれぞれ違います。管理棟のビジターセンターは林野庁の補助で木造。食堂棟と宿泊棟は耐火要求など。木造で耐火基準は満たせても予算、メンテナンスと課題があり、さらに食堂棟は自然の中へ溶け込む演出の為に迫り出したデッキテラスで鉄骨造と。気づいたら3棟とも違う構造になりました。この事は改正基準法における影響が未だ残る中、判断にかなり悩みましたが、大切な事はこの事業を成功させ、人々に感動を味わってもらえる事だと決断しました。

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表 現

 自然と向合う建築の表現、自然に馴染みながらも負けないくらいの存在感を出す方法として、地面から隆起してきた力強さと安定感を垂直ではない柱、壁で部分的に表現する事にしました。
 それは自然の森の中で木々が競いあって上に伸びるさまで、一見無秩序に見えるがそれが集まって森を形成する。 もちろんこの建物も生命を持ち自然の一部として存在しなくてはなりません。円ではなく線で尚且つ交差しながら、見る角度でさまざまな表情を見せ、人に不安感を与えないバランスと木の質感で温もりと安心感を感じてもらい、人も自然の一部であると改めて認識してもらう。日常では味わえない感動を与える事を一番の柱にしました。
 しかし、それを実際に人口的に形にする事は簡単ではありません。造る側の意識と協力が無ければ上手く行かないのです。

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問 題

 設計当初の問題は木造で大空間を要求されるビジターセンター。鉄筋コンクリート造と鉄骨造につては複雑な設計を今までこなして来ましたが、これだけの大きな木造は経験がありません。まして、亜熱帯の沖縄では克服しないといけない課題が木造の場合大きな障害となります。
 まずはシロアリの問題と外部使用での腐食の問題。沖縄でも住宅は木造が増えつつありますが、大きな問題です。まして廻りは自然に囲まれているのですから。また、沖縄は台風の問題も解決しなければなりません。計画地は山の上です。

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出会い
 そこで出会ったのが、鹿児島の山佐木材(株) さんでした。設計の要望を見事にかたちにしていただきました。心配していた大断面の構造、シロアリについても確かな技術力と豊富な経験で、協力していただき、たいへん大きな力になりました。平面計画は単純な木造とは異なり、尚且つメーターモジュールでの計画。
 設計の思想で角度がある平面と断面の構成。木造で力強さと美しさの表現がどこまで出来るのか、経験がない分いろいろな要求を出しました。構造計画、コストの面など前向きに取り組んでいただいた事は大変感謝しております。
 完成した建物は想像以上にすばらしいものです。当初のコンセプトを含めた表現方法が上手くいったと思います。苦労はしましたが、木造の素晴らしさやおもしろさを経験できました。
 それは鉄筋コンクリート造と鉄骨造にはない、豊かさや暖かさがあります。これを機に木造の普及を考えたいと思います。
 また、この事業に参加させて頂いた事、協力して頂いた方々への感謝を心より御礼申し上げます。

ありがとうございました。

(発行 平成23年4月12日)

2011年11月19日 (土)

人にやさしい木造の福祉・保健施設

木造の福祉・保健施設は、お年寄りや体の不自由な方々の安らぎの場に最も最適です。
木の持つ温かみや心地よさは、そこにいるだけで自然との絆が感じられます。

屋久島総合福祉センター こまどり館

DATA
所在地:熊毛郡屋久島町
発注者:屋久島町
設 計:(株)創建築計画研究所
施 工:五洋・ニュー鹿島JV

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宗像市総合福祉センタ- メイトム宗像

DATA
所在地:福岡県宗像市
発注者:宗像市
設 計:(株)東畑建築事務所
施 工:大成・守谷・井上JV

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特別養護老人ホーム 「桜の里」

DATA
所在地:熊本県球磨郡水上村
発注者:医療法人健成会
設 計:A・I・R構造
    -草場設計事務所
施 工:三井住友建設(株)

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東峰村保健福祉センター 「いずみ館」

DATA
所在地:福岡県朝倉郡東峰村
発注者:東峰村(旧宝珠山村)
設 計:(株)徳岡昌克建築設計事務所
施 工:東急建設 (株) 九州支店

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(発行 平成23年4月12日)

東日本大震災について

この度、東日本大震災により被害を受けられました皆様に心よりお見舞申し上げます。
被災地の一日も早い復旧・復興を心よりお祈り致します。

○東京で地震に遭遇
 この3 月11 日には私ほか2 名が東京におり、あの大きな揺れと震災直後の混乱の体験をしました。ほかの二人とは吉松(熊本営業所長)、前田です。

○建築建材展に展示
 3 月8 日から11 日の間行われた国際展示場での「建築建材展・国産材の魅力展」に、当社も出展しました。展示品などの運搬のため、鹿児島から車(プリウス)で行きました。
 今回の当社の展示・提案内容は次の三点でした。
 1. 国産材による公共建築物などの可能性(建築事例)
 2.これからの課題 集合住宅の木造化、その課題
 3.木造建築の耐久性向上のために全構造材をホウ酸処理

○大地震に遭遇
 展示会は当社コーナーへの訪問も多く好調でした。最終日の15 時から当社が考える上記三点について私が話す予定で、50 名近くの方が参集、主催担当者と打合せも済み、開始を待っているまさにその時突然の大揺れです。
 講演会の再開どころか展示会そのものも中止となりました。津波を警戒して暫く会場内高所に避難、その後展示品を撤去しました。すべての交通機関がストップとのアナウンスがあり、車で行っていた幸運を喜びました。

○会場からホテルまでの道中
 夕方5時無事会場を後にしたときはほっとしたものの、それからの展開は驚くべきものでした。すべての交通機関が停止したことによる混乱は甚だしく、歩道から車道にまで人があふれ出しています。交通警官が「歩道へ戻りなさい」と声を涸らしても、必死で誘導しようとしても平然と無視されています。私たちの車も一寸も動かず、唯一公共機関で運営されていたバスも同様でした。もし首都での震度がもう少し大きかったら、あの状態では緊急車両の通行も出来ず、その被害は想像を絶するものになったと思います。
結局ホテルまで約12km の距離に11 時間かかりました。

○驚くべき津波被害
 その後の報道で津波と原発の被害の甚大さ、悲惨さを知るにつけ、私たちが東京で味わった恐怖や難儀は雲散霧消しました。何という災厄が我が国を襲ったことでしょうか。
 被災地はまだ寒さが厳しく何もかも無い無い尽しの中で散乱している木材を薪として利用、暖を取り煮炊きしている人たちを映像で見て何か心が慰められました。

○今度のことで思うこと
 今度のことでいろいろ思ったことを以下に述べてみます。
1.「安全」のため交通機関をストップさせるのは、別のリスク要因になっていないか。平時の「安全」基準とは別に非常事態の「安全」基準が有ってしかるべきではないか。
2.緊急時に非常権限により強力な交通管制は出来ない物か。
3.家庭のエネルギー消費のうち給湯、暖房など熱利用が50%である。現在電力や化石燃料に過度に依存している。この状態から脱却すべきである。オール電化などもってのほか。薪利用や地域バイオマス熱供給も選択肢として考慮すべき。
4.瓦礫の何割かを占める木材から被災者が薪収集を行い、それをちやんと薪として活用する仕組みを作る。考えられる利点として復興コストが低減、被災者の仕事が生まれる、破棄される資源の活用になるなどのメリットが生れる。大型建設機械による建設解体作業に比較すれば丁寧な作業になり、個人資産や個人にとって大切な記念品の回収率向上につながると思われる。
5.知人の夫人がヨーロッパの人で、在京大使館からヨウ素剤の配布があったとのこと。我が国ではどうなっているのだろうか。(佐々木)

(発行 平成23年4月12日)