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2010年11月20日 (土)

日向市駅前交流広場休憩施設

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2010年7月、日向市駅前広場に耳川産スギ材で作った集成材を使用した新しい施設が加わった。日向市駅プロジェクトは、2006年12月の日向市駅の開業を皮切りに東・西口駅前広場、東・西キャノピー、高架下施設、交流広場と整備され、今回の交流広場休憩施設は1999年から始まった日向市駅プロジェクトの最後を飾る施設となる。日向市は耳川河口に位置しており、地場産の杉をまちづくりの随所に用いる地域の風土あふれる都市景観の育成に努めている。日向市駅周辺は杉まちづくりの象徴的な空間となっている。
 これまでに完成した駅舎では変断面集成材を、キャノピーでは新構成集成材と、構造パートナーである川口衞構造設計事務所と杉集成材の新たな可能性を探ってきた。今回も同様に川口事務所とともに日向市駅プロジェクト集大成にふさわしい杉集成材を使用した木構造の計画を行った。
 計画の休憩施設は柱を鉄骨とし、梁を全て杉集成材で構成することを考えた。休憩施設の用途はイベント時の舞台としての機能も課せられるため、最大で9m×6m のスパンを確保する必要があった。梁に小断面集成材を組合せ束ねることで、構造的には大断面集成材相当の梁材として機能させることを考えた。具体的には3寸角の集成材を井桁状に組みあわせ構成される工法で、柱から軒先にいくに従って組合せ段数が少なくなり、徐々に迫り出していく構造となっている。
 設計時点で問題になっていたのは、集成材の精度である。柱廻りで最大13段の集成材をX・Y両方向に組み、なお上下に組合せる集成材には双方に欠込みをして、応力を伝える工法になっているため、現場での精度監理は、非常に難解であることは想像できた。この問題を解決してくれたのが、辰工務店の黒岩所長と山佐木材である。構造の生命線である施工精度を確保するため非常に精巧なモックアップを製作し、施工手順・精度監理を入念にチェックしてくれた。これにより現場での建て方は非常にスムーズに進み、非常に精度の高い杉集成材の架構が建ちあがった。
 出来上がった建築をみると不思議な感覚になる。全体の印象は使用された杉量のわりに架構自体は非常に軽く、軽快な印象を受ける。と同時に細部は、緻密で施工した職人たちの力量が伝わってくる力強い建築である。
 日向にふさわしい杉の施設が、また1つ加わった。

内藤廣建築設計事務所 山田徹様より原稿を頂戴しました。